障害者グループホームへの入居を考えていると、「入居したあとも家族は何をするのだろう」と気になる方もいるのではないでしょうか。
お金の管理や通院、薬、衣類や日用品の購入など、実際の生活を考えるほど細かな疑問が出てきます。
結論からいうと、入居後に家族が担う役割は一律ではありません。
本人ができることや必要な支援、事業所の支援範囲、契約内容などによって役割分担は変わります。
大切なのは「家族がどこまでしなければならないか」を決めることではありません。
本人が生活するうえで必要なことを整理し、本人・家族・事業所などがどのように関わるのかを確認することです。
この記事では、グループホームで介護福祉士として勤務している経験も交えながら、入居後に確認しておきたい役割分担と、担当が曖昧な場合の確認方法を紹介します。
障害者グループホーム入居後の家族の役割は一律ではない
障害者グループホームへ入居したからといって、家族がすべての支援から離れるわけではありません。
反対に、入居前に家族がしていたことを、そのまますべて続けなければならないわけでもありません。
障害者グループホーム(共同生活援助)は、共同生活を送る住まいで相談や日常生活上の援助などを受ける障害福祉サービスです。
実際にどこまで支援してもらえるかは、本人の状況や事業所の支援体制などによって異なります。
入居後も「家族がすべてする」「ホームがすべてする」わけではない
入居後の生活では、通院、金銭管理、服薬、買い物などの対応が必要になります。
これらを誰が担当するのかについて、すべてのグループホームに共通する一つの答えがあるわけではありません。
本人だけで通院できる場合もあれば、職員などの同行が必要な場合もあります。
日用品についても、本人が自分で購入する場合、家族が用意する場合、事業所が購入を支援する場合などがあります。
役割を考えるときは、次のように整理すると分かりやすくなります。
- 本人が自分でできること
- 支援があればできること
- 誰かの対応が必要なこと
- 現在家族が行っていること
グループホームで受けられる支援そのものについて詳しく知りたい方は、「障害者グループホームとは?」の記事も参考にしてください。
本人の希望やできることも含めて役割を考える
役割分担は、「家族がするか、事業所がするか」だけで考えるものではありません。
本人が自分でできることや、どのように生活したいのかという視点も欠かせません。
私が勤務しているグループホームでも、すべての利用者さんに同じ支援をしているわけではありません。
本人が自分でできることは任せ、難しい部分を職員が支援するなど、関わり方は利用者さんによって異なります。
同じ買い物でも、一人で行ける人と同行が必要な人では必要な支援が違います。
本人に何ができるのかを確認したうえで、難しい部分をどう補うのか考えると役割分担を整理しやすくなります。
事業所の支援範囲や契約内容によって分担は変わる
同じ障害者グループホームでも、すべての事業所で細かな支援内容まで同じとは限りません。
職員体制や運営方法、本人に必要な支援などによって対応できる範囲が変わることがあります。
インターネットで「グループホームでは通院に同行してくれる」と書かれていても、利用を検討している事業所で同じ対応が受けられるとは限りません。
反対に、「家族が対応するもの」と思っていたことを事業所が支援しているケースもあります。
生活に欠かせないことほど、「一般的にはどうなのか」だけで判断せず、実際に利用する事業所で確認しておきましょう。
入居後に役割分担を確認しておきたい5つのこと
入居後の生活で役割が曖昧になりやすいのが、金銭管理、通院、服薬、衣類や日用品の購入、家族への連絡です。
どれも日常生活に関わるため、入居前後に具体的な対応を確認しておくと生活をイメージしやすくなります。
ここでも「家族が担当」「事業所が担当」と最初から決めるのではありません。
本人ができること、必要な支援、事業所が対応できる範囲を順番に確認します。
金銭管理|本人のお金を誰がどこまで管理するか
最初に確認しておきたいのが、お金の管理方法です。
本人がすべて管理する場合もあれば、家族や事業所などが管理に関わる場合もあります。
確認したいのは「誰がお金を持っているか」だけではありません。
- 現金をどこで保管するのか
- 本人が使いたいときはどうするのか
- 日常的に使う金額をどう管理するのか
- 高額な買い物をするときはどうするのか
実際のお金の使い方まで確認しておくと、入居後の生活が分かりやすくなります。
私の勤務先では、事前の同意や規定に基づいて、事業所が利用者さんのお金を預かるケースがあります。
本人が使いたいと希望したときには渡し、使いすぎが心配な場合には助言することもあります。
これはあくまで一つの事業所の例です。
金銭管理の方法や事業所が対応する範囲は、利用するグループホームで確認してください。
通院・受診|予約や付き添いを誰が担当するか
通院についても、「家族が必ず付き添う」「グループホームの職員が必ず同行する」と一律にはいえません。
本人が一人で受診できる場合もあれば、何らかの支援が必要な場合もあります。
私の勤務先では、職員が通院に同行するケースが多くあります。
一人で受診できる利用者さんは本人だけで行くこともあり、そのときの体調や状況によって職員が同行する場合もあります。
また、支給決定などの条件を満たしている場合は、居宅介護(通院等介助)などの外部サービスを利用するケースもあります。
通院については、付き添いの有無だけでなく、次の点も確認しておくとよいでしょう。
- 定期通院には誰が行くのか
- 急に受診が必要になった場合はどうするのか
- 病院の予約や変更を誰が行うのか
- 受診結果を本人・家族・事業所でどう共有するのか
普段は一人で通院できる人でも、体調が悪いときには支援が必要になることがあります。
通常時だけでなく、いつもと違う状況になったときの対応も確認しておきましょう。
服薬|薬の保管や服薬確認をどこまで支援してもらえるか
「薬を管理してもらえるか」という質問も、もう一歩具体的に確認したいところです。
服薬の支援には、本人がすべて管理する方法から、職員が準備する方法まで幅があります。
私の勤務先でも、自分で薬を管理している利用者さんがいます。
職員が薬カレンダーに薬を準備し、本人が時間になったら自分で取り出す人もいます。
自分で薬を取り出すことが難しい場合には、職員が用意します。
同じ事業所の中でも、本人に必要な支援によって対応は異なります。
「服薬管理をしてもらえますか」だけではなく、次のような点まで確認しておくと具体的な支援内容が分かります。
- 薬を誰が保管するのか
- 薬の準備を誰が行うのか
- 服薬時間の声かけがあるのか
- 本人が一人で難しい場合はどこまで支援してもらえるのか
衣類・日用品|購入や補充を誰が行うか
洋服や洗面用品などの日用品は、生活していれば定期的に購入や補充が必要になります。
ここも本人や事業所によって対応が分かれやすいところです。
私の勤務先では、本人が自分で購入する人もいれば、家族が用意する人もいます。
事業所から通販で購入するケースもあり、利用者さんによって方法はさまざまです。
入居前後には、次の点を確認しておくとよいでしょう。
- 本人が自分で買い物できるのか
- 買い物への同行はできるのか
- 家族が用意するものはあるのか
- 日用品が不足したことを誰が確認するのか
- 本人だけでは購入が難しい場合はどうするのか
「誰が買うのか」だけでなく、「足りなくなったときにどう動くのか」まで確認すると、実際の生活をイメージしやすくなります。
緊急時の連絡|どのような場合に家族へ連絡が来るか
体調不良やけがなどがあったとき、家族へどのように連絡が来るのかも確認しておきたいところです。
連絡する状況は、本人の状態や事業所のルール、事前の取り決めなどによって異なります。
入居時には緊急連絡先を伝えるだけでなく、次の点も確認しておきましょう。
- どのような状況で家族へ連絡するのか
- 夜間に連絡が必要になった場合はどうするのか
- 家族と連絡が取れない場合はどう対応するのか
家族との情報共有は緊急時だけではありません。
私の勤務先では、週末に自宅へ帰る利用者さんについて連絡帳で生活の様子を共有したり、家族が来たときに直接伝えたりしています。
「何かあったときの連絡」と「普段の情報共有」は分けて確認しておくと、家族と事業所の認識を合わせやすくなります。
家族・事業所・相談支援専門員の役割はどう決める?

役割分担が分からなくても、「事業所によって違うから仕方がない」と終わらせる必要はありません。
現在の状況を整理し、契約内容や個別支援計画を確認しながら話し合えます。
本人に何が必要なのかを整理し、事業所が対応できることを確認します。
調整が難しい場合は、相談支援専門員へ相談する方法もあります。
まず本人に必要な支援と家族が現在していることを整理する
入居前の生活で、誰が何をしているのかを書き出してみましょう。
たとえば、次のようなものがあります。
- お金の管理
- 病院の予約や付き添い
- 薬の準備
- 洋服や日用品の購入
- 行政手続き
- 困ったときの相談
家族が行っていることだけでなく、本人が自分でできていることも一緒に整理します。
すると、「本人がそのまま続けられること」「新しく支援が必要になること」「誰が担当するのか分からないこと」が見えやすくなります。
契約書・重要事項説明書で事業所の支援範囲を確認する
グループホームを利用するときは、サービス内容や事業所の運営について説明を受けます。
その際に確認する書類の一つが重要事項説明書です。
料金や生活上のルールだけでなく、どのような支援を受けられるのかも確認してみましょう。
たとえば、
「定期通院には同行してもらえますか」
「薬はどこまで対応してもらえますか」
「日用品がなくなった場合はどうしますか」
と、実際の生活場面に置き換えて質問すると分かりやすくなります。
すでに入居している場合も、分からないことがあれば契約時の書類を見直したり、事業所へ改めて確認したりできます。
個別支援計画で本人への具体的な支援内容を確認する
グループホームでは、本人の状況や希望などを踏まえて個別支援計画が作成されます。
個別支援計画とは、本人がどのような生活を希望していて、そのためにどのような支援を行うのかを整理した計画です。
「家族が何をするか」だけでなく、
「本人はどのように生活したいのか」
「そのためにどの部分へ支援が必要なのか」
という視点で確認してみましょう。
生活状況が変われば、必要な支援も変わることがあります。
役割分担について気になることがあれば、個別支援計画を確認する機会に相談する方法もあります。
決めにくいことは相談支援専門員も交えて話し合う
本人、家族、グループホームだけでは役割分担を決めにくいこともあります。
相談支援専門員が関わっている場合は、現在困っていることや必要な支援について相談できます。
家族が通院への対応を続けることが難しくなったとしても、単純に「では事業所が担当する」と決まるとは限りません。
本人の状況や利用できる支援を整理しながら、別の方法を検討することもあります。
相談支援専門員そのものの役割について詳しく知りたい方は、「相談支援専門員とは?家族が知っておきたい役割」も参考にしてください。
家族がこれまでの役割を続けられなくなったら相談してよい
入居時に決めた役割分担を、家族がずっと同じように続けられるとは限りません。
家族が高齢になったり、病気になったり、仕事や家庭の状況が変化したりすることもあります。
「一度担当すると決めたから続けなければ」と考えず、現在の状況に合わせて相談していきましょう。
家族の高齢化や生活状況の変化で分担を見直すこともある
本人の状況だけでなく、家族の生活も年月とともに変わります。
これまでできていた対応を続けることが難しくなる場合もあります。
私の勤務経験でも、家族自身に支援が必要になり、家族側を支援する関係者と連携しているケースがあります。
本人の生活を支える方法を考えるときは、家族がこれまで担ってきたことを固定せず、その時点で利用できる支援や関係者も含めて考えていきます。
家族が将来支援できなくなる場合の長期的な備えについては、「障害者の親亡き後の準備」で詳しく解説しています。
一度決めた役割分担がずっと続くとは限らない
個別支援計画は、一度決めた内容をずっと固定するものではありません。
本人の状態や生活状況を確認しながら、必要に応じて支援内容を見直していきます。
以前は一人でできなかったことができるようになる場合もあります。
反対に、これまで必要なかった支援が必要になることもあります。
家族側の事情が変化した場合も同じです。
入居時に決めた分担に無理に合わせず、現在の状況に合わせて改めて考えます。
対応が難しくなる前に事業所や相談支援専門員へ伝える
家族が担当していることを続けるのが難しくなりそうな場合は、見通しが立った段階で相談しておくと調整しやすくなります。
たとえば、
「今後は通院への付き添いが難しくなりそうです」
「これまでのように買い物を続けることが難しくなりました」
と具体的に伝えると、何を調整する必要があるのか整理しやすくなります。
家族ができなくなったことを、そのまま誰か一人へ引き継ぐとは限りません。
本人ができる方法を考えたり、事業所で対応できる範囲を確認したり、必要に応じて別の支援を検討したりしながら、新しい方法を探します。
入居前後に「誰が担当するか分からないこと」を整理して確認しよう
障害者グループホーム入居後の役割分担には、一つの正解があるわけではありません。
最初からすべてを決めようとするより、「分からないことを整理する」ところから始めてみましょう。
現在の状況を書き出すだけでも、事業所へ確認したいことが見つけやすくなります。
家族が現在していることを書き出す
現在、家族が本人のために行っていることを整理します。
大きな支援だけでなく、
- 病院の予約
- 薬の受け取り
- 洋服の購入
- 日用品の補充
- お金の管理
- 各種手続き
など、普段何気なく行っていることも書き出してみましょう。
入居前には当たり前に家族が行っていたことほど、「入居後はどうなるのか」を確認し忘れることがあります。
本人が自分でできること・支援が必要なことを分ける
それぞれについて、本人がどこまでできるのかも整理します。
たとえば買い物でも、
「一人で買い物から支払いまでできる」
「商品は選べるが支払いに支援が必要」
「買い物への同行が必要」
では必要な支援が違います。
家族が現在しているからといって、入居後も同じように家族が担当するとは限りません。
本人ができることを確認したうえで、難しい部分をどのように支えるのか考えていきます。
担当が分からない項目を面談で確認する
整理した中に「これは入居後、誰が担当するのだろう」という項目があれば、そのまま事業所への質問にできます。
たとえば、
- 通院には同行してもらえるのか
- 薬はどこまで支援してもらえるのか
- 日用品がなくなったらどうするのか
- 家族への連絡はどのような場合にあるのか
などです。
入居前であれば見学や面談のときに、すでに入居している場合は事業所との話し合いの中で確認してみましょう。
グループホームへ入居するまでの流れについては「障害者グループホーム入居の流れ」、入居前の確認事項については「障害者グループホーム見学のチェックポイント」も参考になります。
本人や家族の状況が変わったら改めて話し合う
役割分担を一度決めても、それで終わりではありません。
本人ができることが増える場合もあれば、新しく支援が必要になる場合もあります。
家族の生活状況も変わっていきます。
以前決めた分担が現在も合っているとは限りません。
状況が変化したときは、本人、家族、事業所、必要に応じて相談支援専門員などで改めて確認し、その時点に合った支援方法を考えていきましょう。

まとめ|家族の役割を決めるより「本人をどう支えるか」を確認しよう
障害者グループホームへ入居したあと、家族が何を担当するのかは一律ではありません。
金銭管理、通院、服薬、衣類や日用品の購入、家族への連絡なども、本人の状況や事業所の支援範囲によって対応が変わります。
まずは、次の4つを整理してみましょう。
- 本人が自分でできること
- 本人に支援が必要なこと
- 現在家族がしていること
- 入居後に誰が担当するか分からないこと
分からない項目が見つかったら、契約書や重要事項説明書、個別支援計画などを確認し、事業所へ具体的に質問します。
必要に応じて相談支援専門員などの関係者へ相談する方法もあります。
本人や家族の状況が変われば、役割分担も見直していきます。
「家族はどこまでしなければならないのか」と考えるより、本人が生活するために必要な支援を整理し、自分たちの場合は誰がどう関わるのかを一つずつ確認していきましょう。


