「親がいなくなったあと、この子はどうなるのだろう」と不安を感じる家族は少なくありません。
住まい、お金、手続き、日々の支援など、考えることが多く、何から始めればよいか迷いやすいテーマです。
この記事では、障害のある家族の親亡き後に向けて、今から整理できる準備をわかりやすく解説します。
読み終えるころには、家族だけで抱え込まず、次に何を見ていけばよいかが分かりやすくなります。
障害者の親亡き後の準備は何から始める?
障害者の親亡き後の準備は、いきなり住まいや制度を決めるところから始める必要はありません。
まずは、本人が今どのように暮らしているのか、家族がどのような支援をしているのかを整理することから始めましょう。
親亡き後という言葉は、とても重く感じやすいものです。
ただ、準備の目的は不安を大きくすることではありません。
本人がこれからも安心して暮らせるように、今できることを少しずつ見える形にしていくことです。
親亡き後の不安は家族だけで抱え込まなくてよい
親亡き後の不安は、家族だけで抱え込まなくて大丈夫です。
市区町村の障害福祉窓口や相談支援専門員、社会福祉協議会など、相談できる先はあります。
厚生労働省でも、障害のある人が自立した日常生活や社会生活を営めるよう、身近な市町村を中心に相談支援事業を実施していると説明されています。
相談支援について制度上の位置づけを知りたい場合は、厚生労働省「障害のある人に対する相談支援について」が参考になります。
まだグループホームへ入居するか決まっていない段階でも、将来の不安を相談できることがあります。
「今すぐ決めたいわけではないけれど、将来が心配です」と伝えるだけでも、相談の入口になります。
家族だけで考えていると、住まい、お金、制度、手続きの不安が一度に押し寄せてきます。
まずは相談できる先を知り、必要な情報を少しずつ集めていきましょう。
グループホームを含めた相談先を知りたい方は、障害者グループホームの相談先は?相談内容と進め方も参考にしてください。
まずは「本人の暮らし」を中心に考える
親亡き後の準備で最初に軸にしたいのは、本人の暮らしです。
本人がどのような生活なら落ち着いて過ごせるのか。
どの場面で支援が必要なのか。
そこを整理すると、住まいやサービスを考える土台ができます。
たとえば、朝の準備は一人でできるけれど、服薬確認は家族がしている。
お金の管理は苦手だけれど、通所先には一人で通えている。
夜になると不安が強くなりやすい。
こうした日常の情報は、将来の暮らしを考えるうえで大切な手がかりになります。
家族にとって当たり前になっている支援ほど、外からは見えにくいことがあります。
だからこそ、本人の生活リズムや苦手なこと、家族が担っている支援を言葉にしておくことが大切です。
親亡き後に起こりやすい困りごとを整理する

親亡き後の不安は、漠然と考えるほど大きくなりやすいものです。
住まい、お金、契約や手続き、日常生活の支援に分けて見ると、確認すべきことを整理しやすくなります。
すべてを一度に解決しようとしなくても構いません。
まずは「どこに不安があるのか」を分けて考えることが、準備の第一歩です。
住まいの不安
親亡き後の大きな不安の一つが、本人の住まいです。
親と同居している場合、親が支えられなくなったあとに、本人がどこで暮らすのかを考える必要があります。
選択肢としては、自宅で支援を受けながら暮らす方法、障害者グループホームを利用する方法、入所施設を検討する方法などがあります。
どれが合うかは、本人の状況や地域の資源によって変わります。
入所施設も選択肢の一つですが、希望すればすぐ利用できるとは限りません。
地域の空き状況や本人に必要な支援の内容によって変わるため、早めに相談先へ聞いておきたいところです。
グループホームは選択肢の一つですが、すべての人に合うわけではありません。
共同生活が合う人もいれば、環境の変化が負担になる人もいます。
まずは、本人にどのような暮らし方が合いそうかを考えておきましょう。
グループホームの生活イメージを知りたい場合は、障害者グループホームとは?対象者・生活のイメージ・入所施設との違いを解説で基本を確認できます。
お金や財産管理の不安
親亡き後には、生活費や財産管理の不安も出てきます。
家賃、食費、日用品、医療費、交通費など、日々の生活にはさまざまなお金が関わります。
本人が障害年金や手当を受けている場合でも、それだけで生活全体が成り立つかは個別に見ていく必要があります。
また、通帳や支払いの管理を家族がしている場合は、将来誰がどのように関わるのかも考えておきたい点です。
生活費を考えるときは、障害年金、各種手当、自立支援医療、生活保護などが関係する場合もあります。
利用できる制度は本人の状況によって異なるため、具体的な内容は市区町村や相談支援専門員に聞いてみましょう。
お金の話は、家庭によって事情が大きく違います。
そのため、この記事では細かい制度や金額まで踏み込みすぎず、まずは「本人のお金の流れを見える化する」ことを優先します。
グループホームにかかる費用が気になる方は、障害者グループホームの費用相場はいくら?区分ごとの自己負担上限を解説で詳しく解説しています。
契約や手続きの不安
福祉サービスの利用、住まいの契約、医療や行政手続きなど、親亡き後にはさまざまな手続きが関わります。
本人だけで契約や判断をすることが難しい場合は、支援の仕組みを知っておく必要があります。
成年後見制度は、判断能力に不安がある方の契約や財産管理を支える制度の一つです。
法務省の説明でも、判断能力が不十分な方が財産管理や介護サービス・施設入所に関する契約などを行うことが難しい場合に、本人を保護し支援する制度として紹介されています。
制度の概要は、法務省「成年後見制度について」で確認できます。
成年後見制度を使えば、すべての不安が解決するわけではありません。
本人の状況や家族の希望、必要な支援の内容によって、合う方法は変わります。
また、成年後見制度までは必要ない場合でも、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業が関係することがあります。
日常生活自立支援事業は、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理などを支援する仕組みです。
制度の概要は、厚生労働省「日常生活自立支援事業」でも確認できます。
財産の引き継ぎや将来の契約に不安がある場合は、成年後見制度だけでなく、任意後見、遺言、信託などが関係することもあります。
どの方法が合うかは本人や家族の状況によって変わるため、専門家に相談してみましょう。
契約や財産管理に不安がある場合は、市区町村や社会福祉協議会、専門家に相談しながら考えると安心です。
まずは、困ったときに相談できる先を持っておくことを意識しましょう。
日常生活を支える人が少なくなる不安
親が日常的にしている支援は、思っている以上に多いことがあります。
服薬確認、通院の付き添い、朝の声かけ、予定の確認、金銭管理、体調変化への気づきなど、細かな支援が生活を支えています。
グループホームで暮らしている場合でも、家族が毎日その場にいるわけではありません。
家族が面会に来たり、本人が実家へ帰ったりすることはあっても、職員が日々どのような声かけや確認をしているかまでは見えにくいことがあります。
だからこそ、親亡き後を考えるときは、家族がしている支援だけでなく、現在どのような支援を受けて生活しているのかも見える形にしておくことが大切です。
本人の生活を支えている人や仕組みを共有できると、将来の支援を考えやすくなります。
家族が今からできる親亡き後の準備

親亡き後の準備は、大きな決断から始める必要はありません。
今日からできる準備は、本人の希望や生活のしやすさ、家族が今している支援を整理することです。
紙に書き出すだけでも、相談時に伝えやすくなります。
本人の暮らしを見える形にしておくことが、将来の住まいや福祉サービスを考える土台になります。
本人の希望や生活のしやすさを整理する
まず整理したいのは、本人の希望です。
どこで暮らしたいかをはっきり言葉にできる人もいれば、日々の様子からくみ取る必要がある人もいます。
本人が落ち着きやすい場所、苦手な音や人混み、安心できる人との距離感、続けたい通所先や日中活動などを考えてみましょう。
「本人が何を望んでいるのか分からない」と感じる場合でも、普段の表情や行動に手がかりがあります。
たとえば、静かな環境だと落ち着きやすい。
急な予定変更が苦手。
慣れた支援者がいると安心する。
こうした情報は、住まいやサービスを考えるときに役立ちます。
親亡き後の準備は、家族の不安を整理するだけではありません。
本人にとって暮らしやすい環境を考えるための準備でもあります。
家族が今している支援を書き出す
次に、家族が今している支援を書き出します。
毎日のことほど、家族にとっては当たり前になりやすいものです。
たとえば、次のような支援があります。
- 服薬の確認
- 通院の付き添い
- お金の管理
- 食事や水分の確認
- 朝起きるときの声かけ
- 予定の確認
- 不安になったときの対応
- 体調や気分の変化への気づき
このような支援は、相談支援専門員や事業所に本人の状況を伝えるときに役立ちます。
「できないこと」だけでなく、「できること」も一緒に書き出すと、本人に合う支援を考えやすくなります。
家族がしている支援を見える化することは、家族の負担を責めるためではありません。
本人の暮らしを支えるために、何を引き継ぎ、何を支援者と共有するかを考えるための準備です。
相談前に整理しておきたいことをメモする
相談に行く前には、話したいことを簡単にメモしておくと安心です。
最初からきれいにまとめる必要はありません。
最低限、次のようなことをメモしておくと話しやすくなります。
- 今困っていること
- 本人の生活状況
- 家族が不安に感じていること
- 現在使っている制度やサービス
- 相談時に聞きたいこと
- 健康面で気になること
特に健康管理は、将来の住まいを考えるうえでも見ておきたいポイントです。
服薬、通院、体調不良時の連絡、医療機関との連携などは、早めに書き出しておくと相談しやすくなります。
最初から細かいチェックリストを完璧に作る必要はありません。
まずは、相談先に本人の状況を伝えられる程度にまとめることを目標にしましょう。
親亡き後に備えて相談先と福祉サービスを知る

親亡き後の準備は、家族だけで進めるものではありません。
市区町村の障害福祉窓口、相談支援専門員、社会福祉協議会、専門家などに相談しながら考えていくことが大切です。
相談先につながっておくと、必要な制度やサービスを把握しやすくなります。
何かあったときに支援者や関係機関へ相談できる状態を作っておくことも、親亡き後の準備の一つです。
市区町村や相談支援専門員に相談する
最初の相談先としては、市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所があります。
すでに障害福祉サービスを使っている場合は、相談支援専門員に将来の不安を話してみるのも一つの方法です。
相談するときは、使いたい制度名が決まっていなくても構いません。
「親が高齢になってきたので、将来の暮らしが不安です」
「グループホームを今すぐ利用したいわけではないけれど、選択肢を知りたいです」
このように、今の不安をそのまま伝えて大丈夫です。
相談先の名称や対応範囲は、自治体によって異なります。
地域によって使えるサービスや事業所の状況も違うため、具体的な流れは住んでいる市区町村で見ていきましょう。
地域生活支援拠点等も確認する
地域によっては、親亡き後や緊急時に備える仕組みとして、地域生活支援拠点等が整備されています。
整備状況や利用の流れは自治体によって異なるため、市区町村や相談支援専門員に確認しておきましょう。
地域生活支援拠点等は、相談、緊急時の受け入れ・対応、体験の機会などを通して、障害のある人の地域生活を支える仕組みです。
たとえば、親の入院や急な体調不良で一時的に支援が難しくなった場合、どこへ相談できるのかを知っておくと心強い材料になります。
体験利用や緊急時の対応がどのように整っているかは地域によって異なるため、市区町村や相談支援専門員に聞いておきましょう。
障害福祉サービスの基本を知る
障害福祉サービスは、障害のある人の生活や社会参加を支えるためのサービスです。
居宅介護、生活介護、就労系サービス、共同生活援助など、本人の状況に応じたさまざまな支援があります。
厚生労働省でも、障害福祉サービスの内容はサービスごとに整理されています。
制度上のサービス内容は、厚生労働省「障害福祉サービスについて」で確認できます。
親亡き後を考えるときは、本人の生活でどのような支援が必要かを整理しておくと、必要なサービスを相談しやすくなります。
たとえば、自宅での生活支援が必要なのか。
日中活動の場が必要なのか。
住まいの支援が必要なのか。
こうして生活場面ごとに分けると、必要な支援も見えやすくなります。
障害福祉サービスの種類や利用の流れは、障害福祉サービスとは?種類・対象者・利用方法を家族向けにわかりやすく解説で詳しく解説しています。
成年後見制度やお金のことは専門家にも相談する
契約や財産管理に不安がある場合は、成年後見制度などが関係することがあります。
成年後見制度は、判断能力に不安がある方の契約や財産管理を支える制度の一つです。
成年後見制度が必要かどうかは、本人の判断能力や財産状況、家族の状況、今後必要になる支援によって変わります。
成年後見人等の役割には、財産管理や福祉サービス・医療を受けるための契約などが含まれます。
一方で、食事の世話や実際の介護は、一般に成年後見人等の職務ではないとされています。
成年後見人等の役割は、厚生労働省「成年後見人等の選任と役割」で紹介されています。
お金や契約の話は、家族だけで判断しにくいこともあります。
市区町村、社会福祉協議会、専門家などに相談しながら、本人に合う方法を見ていきましょう。
将来の住まいは本人に合うかを見ながら考える
将来の住まいを考えるときは、空き状況や費用だけで判断しないことが大切です。
本人が安心して暮らせるか、必要な支援を受けられるか、生活リズムが大きく崩れないかを見ていきます。
グループホームは、親亡き後の住まいとして考えやすい選択肢です。
もちろん、唯一の正解ではありません。
本人に合う暮らしを考えるための一つの候補として、落ち着いて見ていきましょう。
グループホームは選択肢の一つ
障害者グループホームは、制度上は共同生活援助にあたります。
厚生労働省では、共同生活援助を、共同生活を営む住居で相談や入浴、排せつ、食事の介護、その他必要な日常生活上の援助を行うサービスとして説明しています。
グループホームは、親亡き後の住まいとして有力な選択肢になります。
合うかどうかは、本人の支援量、健康状態、共同生活への向き不向き、事業所の体制によって変わります。
体調面に不安がある場合は、本人の健康状態や必要な支援量に対して、どこまで対応できるのかを聞いておきましょう。
「入れれば安心」と決めつけるのではなく、本人に合う環境かどうかを支援者と一緒に見ていくことが大切です。
探し方の流れを知りたい場合は、障害者グループホームの探し方|相談先・見学・選び方も参考になります。
見学前に条件を整理しておく
グループホームを見学する前には、本人に必要な支援や生活条件を整理しておくと判断しやすくなります。
たとえば、次のような視点です。
- 静かな環境が合うか
- 夜間に不安が出やすいか
- 通所先へ通いやすいか
- 服薬や通院の支援が必要か
- 体調不良時の連絡体制はどうか
- 家族との距離感は本人に合うか
- 職員との関わり方に安心できそうか
見学では、建物のきれいさだけでなく、本人の表情や行動の変化も見ておきたいところです。
環境が変わると、一時的に不安定になる人もいます。
そのため、変化があるからといって、すぐに合わないとは言い切れません。
支援者と相談しながら、本人が落ち着いて過ごせそうかを見ていきましょう。
見学で見るポイントは、グループホームの見学で確認したいポイント|家族が見るべき3つの視点で詳しくまとめています。
複数の候補を比較して考える
グループホームは、1か所だけを見て決めるよりも、複数の候補を比較できると判断しやすくなります。
比較するときは、費用や建物だけでなく、本人との相性、支援体制、夜間対応、相談しやすさも見ていきます。
家族から見ると条件がよく見えても、本人にとっては落ち着かない環境かもしれません。
反対に、建物は新しくなくても、職員の関わり方や生活リズムが本人に合う場合もあります。
大切なのは、条件だけで決めないことです。
本人の変化や行動を見ながら、支援者と一緒に考えていくことが、親亡き後の備えにつながります。
複数の候補で迷うときは、障害者グループホームの比較ポイント|見学後に迷わない選び方で比較の視点を確認できます。

まとめ
親亡き後の準備は、今すぐすべてを決めることではありません。
まずは本人の暮らしを整理し、家族が今している支援を見える形にすることから始めれば大丈夫です。
住まい、お金、契約、日常生活の支援は、どれも一度に答えを出す必要はありません。
本人の希望や生活のしやすさを見つめ直し、相談先とつながりながら少しずつ考えていきましょう。
今日からできることは、次の3つです。
- 本人の希望や生活リズムを書き出す
- 家族が今している支援を見える形にする
- 市区町村や相談支援専門員など、相談先を調べる
将来の住まいを考える場合は、障害福祉サービスやグループホームの基本を知ることも役立ちます。
地域生活支援拠点等や日常生活自立支援事業など、本人の状況によって関係する仕組みもあります。
必要に応じて、相談先、探し方、見学ポイント、比較の視点を確認していきましょう。
不安をゼロにすることは難しくても、相談できる先を持ち、本人の暮らしを見える形にしておくことで、家族だけで抱え込む状態から一歩進めます。
親亡き後の準備は、大きな決断ではなく、小さな整理の積み重ねです。
