障害支援区分の認定と聞くと、「何を見られるのだろう」「うまく伝えられるか不安」と感じる方は多いと思います。
とくに、知的障害のあるご本人を支える家族にとっては、普段の大変さを限られた調査の場で伝えるのは簡単ではありません。
家では当たり前になっている支えほど、外からは見えにくいからです。
たとえば、パニックを防ぐための事前の声かけや、予定変更を避けるための調整、こだわりへのさりげない配慮が、毎日の暮らしを支えていることがあります。
そのため、支援が入っていることまで伝わらないと、実際より軽く受け取られてしまうのではないかと不安になるご家族もいます。
認定調査で見られるのは、「できるかどうか」だけではありません。
どんな場面で、どれくらい支えが必要なのかも大事な視点です。
この記事では、障害支援区分の基本的な考え方、認定調査の流れ、調査前の準備について家族目線で整理します。
あわせて、調査でどのような点が見られるのか、何をまとめておくと伝わりやすいのかも解説します。
障害支援区分とは何か
障害支援区分は、障害のある方にどの程度の支援が必要かを総合的に示す区分です。制度の全体像は、厚生労働省の障害支援区分の概要でも確認できます。
主に、介護給付などの支給決定を考えるときの材料として使われます。
判定結果は、非該当または区分1から6で示されます。一般的には数字が大きいほど支援の必要性が高い傾向がありますが、それだけで生活のすべてが決まるわけではありません。
実際の支給決定では、本人の状況や希望、生活環境、家族の支援状況、サービス等利用計画案なども踏まえて調整されます。
障害支援区分をひとことでいうと
家族がまず押さえておきたいのは、障害支援区分は「障害の重さを単純に決めるもの」ではないということです。
病名や診断名そのものより、日常生活の中でどれくらい支援が必要かが見られます。
確認されるのは、食事、排せつ、移動、着替えだけではありません。
- 意思疎通のしやすさ
- 説明の理解のしやすさ
- 落ち着いて過ごせるか
- こだわりや行動面の特徴があるか
こうした点もあわせて確認されます。
区分1〜6は何を表しているのか
区分1から6は、あくまで支援の必要度の目安です。
家族が最初から細かい判定基準を覚える必要はありません。先に区分を当てにいくより、普段の生活の中でどんな支援が必要かを整理しておくほうが大切です。
区分で何が変わるのか
障害支援区分は、利用できるサービスの内容や量を考えるときの一つの材料になります。
ただ、支給決定は障害支援区分だけで一律に決まるものではありません。厚生労働省の介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)でも、本人の状況や介護者の状況、生活環境、サービス等利用計画案などを踏まえて判断する考え方が示されています。
住まいの支援まで含めて全体像を見たい方は、障害者グループホームとは?対象者・生活のイメージ・入所施設との違いを解説もあわせて確認してみてください。
障害支援区分の認定の流れ

障害支援区分の認定は、申請してすぐに結果が出るものではありません。
申請後は、認定調査、医師意見書、一次判定、二次判定を経て、結果通知へ進みます。先に流れを知っておくと、調査前の不安を少し整理しやすくなります。
1. 市区町村に相談して申請する
最初は、市区町村の障害福祉窓口に相談して申請を進めます。
申請を受けたあと、市区町村が認定調査や医師意見書の準備を進めます。この段階で、必要書類やその後の流れを案内してもらえることが多いです。
制度は分かりにくい部分もあるため、一人で抱え込まず、窓口や相談支援事業所に確認しながら進めると安心です。
2. 認定調査で生活の実態を確認する
申請後は、市区町村の調査員が自宅などを訪問し、ご本人の日常生活の様子を確認します。
家族が不安を感じやすいのは、短い時間の中で普段の大変さを十分に伝えられるかどうかだと思います。
認定調査は、全国共通の認定調査項目に基づいて行われます。見られるのは、何ができるかだけではありません。どの場面で、どのような支援が必要かも確認されます。
厚生労働省の認定調査項目の判断基準では、「できたりできなかったりする場合」は「できない状況」に基づいて判断するとされています。知的障害や発達障害、精神障害などによって、場面によってうまくできない場合も含めて見ていく考え方です。
たとえば、次のようなことも調査で伝えたい内容です。
- 見守りがないと動けない場面がある
- 声かけがないと次の行動に移れない
- 予定変更で混乱しやすい
- 初めての場所では普段よりできなくなる
毎日の支援は細かな積み重ねなので、その場で急に聞かれると言葉にしにくいものです。食事、着替え、通所準備、パニック時の対応など、困りやすい場面を事前にメモしておくと、伝え漏れを減らしやすくなります。
3. 一次判定と二次判定で区分を決める
認定調査と医師意見書をもとに、まず一次判定が行われます。一次判定はコンピュータによる判定です。
その後、市町村審査会で二次判定が行われ、最終的な区分が決まります。
二次判定では、一次判定の結果だけでなく、特記事項や医師意見書の内容も踏まえて総合的に審査されます。そのため、調査の場では「一応できます」で終わらせず、どんな支援が入っているのかまで伝えておくことが大切です。
4. 結果通知のあとに支援の調整が進む
結果が届いて終わりではありません。そこから、実際の支援の形を整えていく段階に入ります。
主な流れは次のとおりです。
- サービス利用の調整
認定結果や生活状況をもとに、どのサービスをどれくらい利用するかを考える - 計画相談支援
相談支援専門員などと一緒に、サービス等利用計画を作成する - 事業所との相談
実際に利用する先と面談し、生活に合う形を整える
支給決定や手続きの流れをあわせて確認したいときは、受給者証とは?手帳なしでも使える?基本と申請の流れも参考になります。
認定調査で家族が伝えたいポイント
認定調査では、できるかできないかだけでなく、どのような支援が必要かも見られます。
厚生労働省の障害支援区分に係る研修資料<認定調査員編>(第5版)でも、見守りや声かけなどの支援によって行為や行動ができている場合を評価すると示されています。
ここでは、家族が整理しておきたいポイントを絞って見ていきます。
「できる」の裏にある支援を書く
調査の場で見落とされやすいのは、一見すると本人が一人でできているように見える場面です。
けれど実際には、家族が支えているから成り立っていることもあります。
たとえば、こんな場面です。
- 着替え
服を着ること自体はできても、服選びや順番の声かけがないと進まない - 通所の準備
本人が準備しているように見えても、家族が持ち物を並べて確認している - 食事
食べることはできても、食べる量や順番の見守りが必要 - 入浴
入ることはできても、声かけや手順の確認がないと止まってしまう
「できる」とだけ伝えると、その裏にある支援が見えにくくなります。どこまで一人で進められて、どこから支えが必要になるのかを分けて書くと伝わりやすくなります。
落ち着いて見える日は「支援が入っている日」かもしれない
認定調査で「今日は落ち着いていますね」と言われることがあります。
それ自体は悪いことではありません。ただ、その落ち着きが何によって保たれているのかは、分けて伝えたほうが実態に近づきます。
たとえば、
- 事前に予定を説明しているから落ち着いて過ごせる
- 声かけがないと動き出せない
- 見守りがないと混乱しやすい
- 刺激を減らす配慮をしているから穏やかに見える
といった形です。
うまくいかないときに起こりやすいことも、できる範囲で具体的に伝えておくと役立ちます。たとえば、混乱して動けなくなる、泣き叫ぶ、自分や物に向かってしまうなどです。
メモは3つの軸で整理すると伝えやすい
調査の場では、緊張して言葉が出にくくなることがあります。そんなときは、次の3つの軸でメモを整理しておくと話しやすくなります。
- 頻度
1日に何回くらい声かけや促しをしているか - 時間
見守りや付き添いにどれくらい時間がかかっているか - きっかけ
どんな場面で混乱やパニックが起こりやすいか
「できる・できない」の二択ではなく、どれくらい支援が入っているかで整理するのがコツです。
調査前に家族が準備しておきたいこと
認定調査の前に、すべてを完璧にまとめる必要はありません。それでも、普段の生活を少し書き出しておくだけで、伝わり方はかなり変わります。
まずは1日の流れを書き出す
整理しやすいのは、ご本人の1日の流れです。
朝起きてから寝るまでの中で、どの場面にどんな支援が必要かを書き出してみると、生活の実態が見えやすくなります。
たとえば、次のような場面です。
- 起床時の声かけや促し
- 着替えの補助や確認
- 外出時の持ち物準備
- 食事中の見守りや介助
- 入浴の促しや介助
- 夜間の見守りや対応
書き出してみると、「普段は当たり前にやっていたけれど、実はこれも支援だった」と気づくことがあります。
メモは短すぎず、場面が浮かぶ形で書く
調査の場では、短い一言だけでは状況が伝わりにくいことがあります。
悪い例
パニックになります
良い例
週に3回ほど、予定が変わると30分ほど泣き叫ぶことがあります。
その際は自分の頭をたたくこともあり、家族1名がそばについて声かけと見守りを続けています。
このように、頻度、きっかけ、続く時間、必要な支援まで書いておくと、普段の大変さを整理しやすくなります。
すでに福祉サービスを利用している場合は、家だけでなく事業所での様子も参考にしてみてください。家での姿と外での姿の両方があると、より実態に近い説明につながります。
不安なときは相談先を早めに頼る
「この準備で合っているのだろうか」と迷ったら、早めに相談して大丈夫です。
相談先としては、次のような窓口があります。
- 市区町村の障害福祉窓口
- 相談支援事業所
厚生労働省の障害のある人に対する相談支援についてでも、相談支援の役割や考え方が案内されています。
口頭だけでは整理しにくいときは、チェックリスト形式で生活の様子を書き出しておく方法もあります。
当日の伝え漏れを減らしたい方は、必要に応じて活用してみてください。
私も、調査前は「何をどこまで書けばよいのか」で迷いやすいと思います。
そうした整理に使いやすいよう、事前チェックリストも用意しています。
まとめ
障害支援区分は、障害のある方にどの程度の支援が必要かを総合的に示す区分です。認定は、申請、認定調査、医師意見書、一次判定、二次判定、結果通知という流れで進みます。
認定調査で伝えたいのは、「できるかどうか」だけではありません。どんな支援が入って、今の生活が成り立っているのかです。
たとえば、
- 声かけがあれば行動に移せる
- 見守りがあれば落ち着いて取り組める
- 予定や持ち物の管理を家族が担っている
といったことも、生活の実態を伝えるうえで大事な情報です。
まずは、起床から就寝までの流れの中で、どこに声かけや見守りが必要かを書き出してみてください。準備に不安があるときは、市区町村の窓口や相談支援事業所に相談しながら進めると安心です。

